現代のシンデレラになる方法
Chapter 3

憂鬱な誕生日




「あ、ニキビ」

鏡を覗き込むと、額の真ん中にぷっくり赤いデキモノ。


「ニキビじゃなくて吹き出物な」


横でそう言う憎たらしい昴を足蹴にする。

まぁ、ごもっともなんですけど。


「……なんか、肌のハリもなくなってきたし、ところどころカサカサだし」

「ただの老化現象だろ。自然なことだろうが」


そう言いながら奴は雑誌をペラペラめくる。

こちとら一大事だっていうのに。

日に日に体の衰えを感じる今日この頃。


昔はもっと、夜勤最高!みたいな感じだったのに。
明けの日も休みみたいなもんで、一日中遊ぶ元気だってあった。

今じゃ、夜勤明けの動悸に悩まされている。
夜勤中も起きているだけで精一杯だ。

仕事柄、生活が不規則なもんだから肌の老化も早いんだ……。


私もついに、CMでおなじみのドモモルンリンクルに手を出す日がきたか……。


「ドモモルンリンクルか……」

「何それ?」

「化粧水だよ」


自分には無縁のものだと思っていたのに。

がくっとうなだれながら横にいる昴の顔を盗み見る。

あぁ、なんで男のくせに無駄に肌が綺麗なんだろうか……。


「……何?」

その私の刺さるような視線に気付いたのか、昴が訝しげに私を見る。


「あんた男のくせに、なんでそんなに肌綺麗なの。化粧水何使ってんの?」

「え?普通のメンズのやつだけど」


あぁ、羨ましい。

大した努力もせずにそんな綺麗な肌を維持できるなんて。

きっと1000円もしない安い化粧水使ってるのに。


私なんて……。

…………。

それらに費やしてきた出費を思い出す。

化粧水だけじゃない、これまでありとあらゆる化粧品や美容器具を買った。

ヒアルロン酸、コラーゲン、コエンザイムなんちゃらかんちゃら。

美顔スチーマーに、くっそ高かった美顔器。

良いと言われるものは片っ端から試してきた。


しかし結局のところ美容成分の違いなんて大して実感できず。

スチーマーも美顔器も今ではタンスの肥やしになってしまっている。


……あぁもう、考えるの止めよう。

こんなことを考えても、心にダメージを重ねるだけだ。


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