一生に二度の初恋を『あなたへ』
・雨の日に遠いキス
「……そろそろ、帰らない?」
「あーもう六時だな」
「雨……かなり降ってるな。これ帰るのに一苦労」
窓の外を見ると、いつの間にか雨が降っていた。それもかなりのどしゃ降り。
窓ガラスが少し曇って外の景色もぼんやりとしか見えないけど、雨音で何となく雨の状況は分かる。
傘持ってきてない……斎藤くんに言ったら貸してもらえるかな。
こんな雨の中帰るっていうのも濡れそうで嫌だけど、ここにずっといるわけにもいかないし……。
「わたし、お母さん今日仕事休みだから迎えにきてもらおうかな」
結愛ちゃんがスマホをいじりながら独り言のように呟くと、わたしたちを見回した。
「瞬、なっか、優。乗ってく?
あ……でもお母さんの車、小さいんだよね。全員乗れるかなぁ」
「じゃあ、わたしいいよ!!電車だし」
三人は幼馴染みで家が近いからいいけど、わたしだけ遠いし申し訳ない。
結愛ちゃんがわたしの方を見る度に小刻みに首を振った。
「うーんでも、それなら男二人を歩かせればいいしなー。あ……でも……」