可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

HRデー当日


【HRデー当日】



まさに遠足日和。

HRデーは、朝から空が澄み渡って空気もからっとした、気持ちのいい天気になった。



集合場所の八景島駅は、東京湾を臨む場所にあった。

だいぶ早めに到着したあたしは、時間を潰すためきれいに舗装された海岸沿いの道を歩いて、しばらくひとりで潮風に当たっていた。



最近は渚に誘われて学校帰りにちょっと寄り道をするくらいで、普段はマンションと学校と予備校とを往復するだけ。こうやってのんびり外で景色を眺めることなんてなかった。



ひさびさに感じる、心地のいい空気。

いつもはガリ勉で屋内に引きこもってばっかだけど、日の当たる場所はやっぱ気持ちいい。
頬に当たる5月の風がさわやかだ。




----------さてと。どこに潜んでいようかな。




そんなことを考えつつ、ゆっくり石段を上って海辺から八景島駅へと戻っていくと。

あたしが到着したときには無人に等しかった駅前の広間は、いつの間にか私服姿のうちのクラスの男子と女子であふれていた。

まだ集合時間前のはずなのに、どうやら時間前倒しで担任の冬木が「朝の挨拶」を終えたらしく、班ごとの点呼がはじまっていた。




--------------まずったな。




目立たないように駅に戻ってホームのベンチにでも座ってようかと思ってたのに。風が気持ちよくて、思ったより海辺でのんびりしすぎたみたいだ。


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