薫子様、一大事でございます!

疑惑が晴れた日



「さてと、それじゃ、そろそろ行くとしますか」


芙美さんが去って静かになった事務所で、北見さんが大きく伸びをしながら私を見た。


「行くって、どこへですか?」

「何言ってるんだよ。今日は星野さんの、」

「――え!? 私たちも行くんですか!?」

「あたりまえだ」


憮然として言う。


「調査はまだ途中だぞ? しっかり完結させなきゃ、もらえるものも貰えないだろ」


それはきっと調査料のことだ。

星野さんに途中経過を報告してから6日。
今日はいよいよ、“その日”だ。


「あ、それじゃ、着替えなくちゃ」

「その必要はない」

「どうしてですか?」

「俺たちは、遠くから眺めるのみ」


……そっか。
そうよね、当然だわ。


「銀さんには、行き先だけメモで残しておこう」

「そうですね」


滝山、また寂しがるかしら。


そのメモを見た滝山の顔を想像しながら、北見さんの後に続いて事務所を出たのだった。

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