倦怠期です!

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12月いっぱいで、管理部の藤田さんと太田さんが寿退社をして、1月から矢野さんと永田さんが入社したこともあって、1月8日に、女子社員全員で歓迎会兼新年会が行われた。
受付を含めた総務担当だった太田さんは、お見合いで結婚相手を見つけたそうだ。
まだ24歳なのに、お見合いまでして結婚相手を見つけたいという意欲は、結婚する気がないお子様の私には、理解できないんだけど・・・太田さんは、因幡さんを狙っていた一人で、因幡さんと結婚できる望みはないと諦めた上で、お見合いすることに決めたらしい。

同じく、受付を含めた総務担当だった藤田さんの結婚相手は、なんと、冷熱2課の塚本課長だ。
42歳の塚本課長は、もちろん既婚者だったけど、数ヶ月前に離婚したらしい。
そういう噂は全然知らない私は、この時初めて、倉本さんから事の次第を聞いた。

とにかく、課長は28歳の藤田さんと晴れて再婚。
ちなみに藤田さんは初婚だ。
二人の年の差、14歳。
しかも課長には、元奥さんとの間に子どもがいる。
結婚する前から波乱な匂いがプンプンするけど・・・愛があれば乗り越えられるのかな。

1月から入社した矢野さんと永田さんは、二人とも派遣社員として採用されたので、厳密に言うと、タハラの正社員ではない。
バブル真っ盛りの今、タハラは儲かっているけど、部長をはじめとした上の人たちは、儲かっているからこそ、経費節減を心がけるようにとよく言っている。
派遣を採用することも、経費節減の一環なのだろうか。



タハラでは、外からかかってくる電話を、管理部の受付担当の人が取って、各部に回す仕組みになっている。
私は、私宛にかかってくる電話はもちろん、冷熱の営業の人たちが、電話中や出かけていていないときの対応をする。

「はいっ」
「えっと、横浜製作所さんから因幡さん宛なんですが・・」と、永田さんの控えめな声が、受話器越しに聞こえてくる。

受付は、かかってくる顧客の会社名と、タハラの営業担当の名前、内線番号などを覚えないといけないから大変だ。
もちろん、席と内線番号が書かれた紙は、全社員持ってるけど。

「はい、分かりましたー・・・もしもしー」
「お。その声は、すずちゃんだな」
「はいー。今井さん、あけましておめでとうございます」
「そういえば今年初だねー。おめでとー。今年もよろしくねー。すずちゃんが出たってことは、因幡さんいない?」
「いえ。今他の電話にかかっているんですよー」
「あ、そう。すずちゃんで分かるかどうか、分かんないけど、聞いてもいい?」
「どうぞ」と私は言いながら、受話器を左肩と左耳に押し当てて、メモ紙を取った。

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