初恋 二度目の恋…最後の恋

研究という仕事

 小林さんとの同行は慣れてきたというのもあるし、小林さんが営業しているのにとっても気さくな雰囲気を醸し出すので、相手の会社の担当者も私の話を聞いてくれる。実際に交渉は小林さんがするけど、商品についてのより踏み込んだ説明は私がすることが増えていた。


 小林さんは自分の言いたいことを言うと、私が話しやすいように切り口をくれる。高見主任の呼吸を外さないようにと練習した商品説明のテクニックは小林さんの同行でも役に立っていると思う。相手先の担当者がパンフレットとその商品に関する数値の入ったグラフに真剣な視線を向けていた。


 そして、次回に契約ということで話が終わったのだった。



「今日も美羽ちゃんの商品知識に助けられた」


 交渉が順調に終わった後、小林さんがふと『美羽ちゃん』と私を呼ぶ。さっき、営業室で封印と言っていたのはどうなったのだろうか?そんな思いで見ていると、小林さんも私を『美羽ちゃん』と呼んだことにハッと思ったようだった。


「今は仕事中じゃないから、美羽ちゃんで間違いないから」


 少し言い訳に満ちた言葉を口にする小林さんを可愛いと思ってしまった。私よりも身長も高いし、がっしりとした身体つきの小林さんを可愛いと思うなんておかしいけど、やっぱり可愛いと思ってしまう。


「どちらでもいいですよ」


「じゃ、営業室と客先以外では美羽ちゃんで」


 そう言って笑う小林さんはやっぱり爽やかで可愛かった。

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