最低王子と恋の渦
*オリオンブルー

お向かいさん








   *   *   *





――コンコン



「はい」




部屋のドアをノックする音が聞こえ、珠妃は手を止めて返事をする。


ガチャッとドアが開かれたかと思えば、「こんにちは」という挨拶と共に優太が顔を覗かせた。




「漫画描いてた?」


「うん」




ズイと珠妃の手元を覗き込んできた優太。


珠妃は現在夢に一歩近づく為に漫画を描いている。



そして珠妃の画力は中学一年生にしてなかなかのものだという。




「優太部活だったの?」


「…うん。あ、ちゃんとお風呂入って着替えたから汚くないよ」


「いや、そういう意味で聞いたんじゃないのに…」




優太がストンとベッドに腰を下ろすのを見て、珠妃は溜息を漏らした。



よく優太は珠妃の部屋に遊びに来る。


赤ちゃんの頃から一緒にいた優太は珠妃にとって一番信頼出来る人なのだ。



でもマイペースな優太の考えている事は珠妃でも分からない時が多い。




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