暴走族に愛された不登校女子。
* Story 10 *
静くんが悲しげな表情を見せた。
あたしは何も言えなかった。
「…分かった…よ」
小さく言うと、俯いた。静くんがあたしのことを理解してくれたのは、本当にありがたいし嬉しいと思う。
でも「見たくない」ってことは、静くんにとってはトラウマなのだ。
「ありがとう、杏。ほら空気おかしくなっちゃったし、ピアノで落ち着こう?」
「静くんらしいや」
ピアノを弾き始めた静くんを横目に、窓側に行った。
窓辺に腰を下ろすと、心が落ち着いてくる。
あたしと静くんは言い合えば、こうしてピアノで解決するのだ。
懐かしくて、温かい音。
「……杏が聞いていたこの曲。僕のオリジナルなんだよ?」
「えっ?」