最低王子と恋の渦

猫かぶりちゃん







――――――――――――
――――――……




映画を見終わり、私達は暗くなった帰り道を二人で歩いていた。




「ホラー映画観た後だと夜道ちょっと怖いね」




と、私が言ってみせると三鷹くんはフッと鼻で笑ってきた。




「あんなのただビックリさせてるだけじゃん。怖かった?」


「まあね。私は割と怖かったよ」


「田中さんってビビリなんだ」


「三鷹くんが怖がらなさすぎなんです」




久しぶりにホラー映画観たし、私は楽しめたんだけどなぁ。


三鷹くんは楽しくなかったかな。



…自分から誘ってきたくせに。




「ていうか後ろのカップルがうるさくて不快だった」


「…ああ、いたね」




映画が始まると怖いシーンで毎回彼女の方がキャッて怖がっててうざかったのなんの。


三鷹くんもやっぱり気付いてたんだね…。




「もし田中さんが怖がって俺に助け求めてきたら俺、」


「絶対しないから安心して」




私は声を強めて三鷹くんの言葉を遮った。

どんな貶し言葉を投げ掛けられるのか分かったもんじゃない。



三鷹くんはそんな私を見てまたフッと鼻で笑う。



…それムカつくな。







< 111 / 347 >

この作品をシェア

pagetop