幕末オオカミ 第三部 夢想散華編

生きる意味【総司目線】



慶応4年閏4月


薄らと目を開けると、飛び込んでくるのは緑ばかり。


深い緑の間から日の光が差し込み、柔らかく周りを包む。


「土方さん、もう会津についてたよ。ついでに久しぶりに一にも会ってきた」


平助は冷静な表情で報告をする。

そこには以前のような笑顔はない。


俺はもののけの森の、木の根で休んだままそれを聞いていた。


大木の根が絡み合ってできた天然のゆりかごで横になったまま、もう何日が過ぎただろう。


近藤先生の死を目の当たりにしてから、俺は土方さんの元には戻らずに、銀月と楓ともののけの森に帰ってきた。


あのあと、敵の手からなんとか逃れた俺は、急なめまいがして倒れてしまった。


それから何度か喀血して、楓の血をもらって生き延びるも、どうしてか起き上がれない。


何もやる気がしなくて、ただぼんやりと寝て過ごしている。


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