春を待ってる

※ 美咲


私は、この時期が大嫌いだ。



学校の帰り道、本屋から出てきたら貴一が居た。貴一の両腕には、いっぱいに抱えたチョコレート。中には義理もあれば、貴一に対する本命もあるだろうけど。
だろうね、と思った。




だって、貴一は結構モテる。
とくにチャラいとか目立つ存在でもないけど、背が高くて水泳で鍛えた大きな肩。すらりと綺麗な鼻筋で、顔立ちも整ってる。



たぶん幼馴染みじゃなかったら、きっと私なんて眼中にないんだろう。



「妬いてるの?」



貴一が頬を緩ませる。



「別に」と答えて早々に去ってしまうつもりだったのに、貴一はしつこく縋ってくる。



「美咲はチョコくれないの?」

「あげない」



ぷいと目を逸らした。



バカじゃない? そんなに大量にチョコレートをもらってるのに、まだ欲しいの? 



去年の四月一日、貴一と私は告白し合った。
お互いの好きを確認したけれど、私たちの関係にとくに変化はない。キスしかしたことないし、付き合ってるのかさえわからない。



あの日、貴一の言ってくれた『好き』は本物の好きという感情とは違うのかもしれない。
私には未だ読み取れない。



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