アロマティック

距離感

 今日は、生放送の大きな歌番組があり、永遠はその番組の司会を任されていた。
 司会という大役を与えられた為か、いつもと違い、楽屋がEarthの他のメンバーと分かれている。永遠は通しのリハーサルで席を外しているので、テーブルが真ん中にある広い畳の和室で、みのりはひとりで過ごしていた。

 永遠と離れている間は、自分の時間だ。
 楽屋によって、テレビがある部屋とない部屋があるが、Earthのメンバーがいるときとは違い、みのりがひとりでいる間はまず付いていることはない。
 普段からテレビを見ることを避けていたからこそ、電波が発信する情報に疎く、Earthの存在もかじる程度しか知識がなかったわけだ。

 自分時間は、家から持ってきた文庫本を読んだり、アロマのレシピを考えたりしながら過ごしていた。
 永遠にアロマを教えるようになって、もう10日。仕事のペースにも慣れ、時間もうまく使えるようになった。
 なんだか時が過ぎるのが早く感じる。
 そして、改めて思うのは、永遠の凄さだった。
 あるときはビシッとスーツを着こなして、クールに。あるときはカジュアルな服を着て、フレッシュさやポップさを表現して魅了するモデル。今日のように、大きな番組の進行役も臆することなく堂々とこなしてしまう精神力の強さ。身軽さを生かしたダンスと、よく透る低音ボイス。切れる頭と、貴公子のような上品な顔立ち。
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