かさぶた

鎮痛









すっかり暗くなった帰り道。

私は岡村くんの隣を歩いていた。



店を出たところで志乃さんとはお別れした。

きっともう、会うことはない。



「……ねぇ、岡村くん」

「んー? なにー?」

「好きって、言わなくてよかったの?」



岡村くんが傷つくとわかっていながら、私はそう尋ねた。



「先輩が好きな人の迷惑になりたくないって言ってたじゃん?」

「そうね」

「なら、おれも先輩と同じでいようって思ったの」

「っ……」

「それに、おれはまだ『好きだった』なんて言えないから」



今もまだ、好きだから。



きっと、そういうことなのよね。






「委員長、ありがとね」



ふにゃりと岡村くんが柔らかく笑う。



「背中押してくれて、ついてきてくれて、ありがとう」



ただの勝手な行動。

私のしたことで、岡村くんは余計に傷ついたりもしたのに、それでも。



ありがとう、と言えるあなたがやっぱり大切だと思う。

その気持ちは自分の中で唯一愛おしいと思えるものの、欠片。






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