不機嫌な君

いつの間にか傍にいる

その日は、金崎部長の言葉が気になって、何にも集中出来ず、上の空で1日を過ごした。

…週明け。
会社のロビーで、バッタリ悠斗さんに出くわした。

…初対面の人に、失態を見せてしまっている。何だか気まずい。

「…あ、おはよう、島谷さん」
「…おはようございます。…この前は、すみませんでした」

そう言って頭を下げる。

「いいよ。俺の方こそゴメンな?
島谷さんが、お酒弱い事知らなくて、ついつい飲ませ過ぎたみたいで」

「いえ…私も言わなかったから…」
そう言って苦笑いする。

「それより、あの後ちゃんと家に帰れた?噂の金崎部長が突然目の前に現れたから驚いたよ」
悠斗さんは、困ったように笑った。

「…」
私は一瞬答えに困る。
まさか、金崎部長の家に泊まったなんて、言えない。

「…島谷さん?」
「…ぁ、はい。…ちゃんと帰れました」

そう言って、作り笑いを浮かべるのが精一杯だった。

「…そう、よかった。…もしかして、金崎部長とそう言う関係なのかなって、ちょっと焦った」

「そ、そんなこと、あるわけないじゃないですか」
そう言って、悠斗さんの肩をバシバシ叩く。

「…あ、ゴメンなさい」
自分の行動に慌てふためく。

「…ほんと、島谷さんは面白いね。
一緒にいてて、飽きない」
そう言って、悠斗さんは微笑んだ。
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