月に一度のシンデレラ

 良太







10月17日、金曜の夜。渋谷の街はどうしていつも浮かれているんだろう。俺は最低な気分で宮益坂を歩いてた。
部下の齋藤をぶん殴ってやりたい。あいつのせいで大口の契約をフイにした。今回の話がうまくまとまれば、俺の昇進は間違いないと言われていたのに。

要するに、馬鹿と組むとロクなことが無いってことだ。気晴らしだ、気晴らし。

さて、誰を呼び出そう。俺は携帯のメモリに入った複数の女の肢体を思い浮かべていた。
こんな夜は手近な女を抱くに限る。


俺は独身だ。結婚なんて意味の無いことだと思ってる。身軽でいたい俺にとって女は足手まといでしかない。
だけど性欲は人並みにあるし、素人にしか興味は無い。そんな俺にとって複数のセフレは、いつでも取り替えがきく消耗品みたいなものだ。幸い、この見た目のおかげで声をかけてくる女は腐るほどいた。


よし、今日はアイツだ。そう決めた瞬間のことだった。

「どこ行くんですかぁ?」

見知らぬ女が、俺の左腕にしがみついてきた。
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