結婚してください

・・ゆれる思い


【英輔★side】

亜紀は体調を崩していたはずなのに何故かパーティ会場へとやってきていた。


あれだけ、パーティへの参加を拒んでいたのに何故来たのか俺には理解できない。


だが、俺は、玄関ホールからの悲鳴と騒ぎで亜紀が会場へ来たのを知らされた。だから、それまでは亜紀が会場入りしたのを本当に知らなかったのだ。


そして、倒れた亜紀を抱きかかえると嘘のように軽くなっていた。以前、眠る亜紀をベッドに運ぶ時に抱いた時はまだ重かった。あれは屋敷に来たばかりのときだったと思う。

しかし、
今の亜紀は、ドレス姿で美しいはずなのに痩せていて鎖骨が余りにも痛々しく浮き出ている。


そんな亜紀を抱きかかえ車に乗せようとした時、愛華が、俺の行動を快く思わないセリフを言った。


そして俺もそれに対し怒りに任せた言葉を発した。


『だまれ、亜紀は俺の婚約者だ。俺が連れて帰る。』


そうだ、どんな女であれこの女は俺の婚約者なんだ。だから、俺が屋敷に連れて帰る必要がある。


他の誰にも触れさせることは出来ない。俺の女だから。


そう思って屋敷まで連れて帰った。


屋敷に着いた後も、俺は亜紀を抱きかかえ部屋まで運んだ。


俺のこんな姿を想像できなかったのだろう、柴崎がやけに嬉しそうに俺を見ていた。


「当然のことをしているだけだ」


柴崎のにやけ顔に腹を立てた俺は悪態をついていた。


そして、医者による診察では風邪と診断されたが、ここで思わぬことを言われてしまった。


藤堂家に住んでいながら栄養不足だと。このままでは栄養失調にもなりかねない。


なんてことだ! 藤堂家の婚約者が栄養失調だと?!


だからあんなにも軽くなっていたのか?!


俺の責任なのか? 俺がここまで追い込んでしまったのか?






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