卯月の恋

髪にふれる指

部屋中にスパイスのいい香りが漂っている。

朝から煮込んでいたカレーのお鍋をコンロにかけながら、ぐるぐるとおたまでかき混ぜる。


市販のルーを使わず、スパイスから作るカレー。

いろいろ考えたけど、私の得意料理といえばお母さんに教えてもらった宮内家に代々伝わるこのカレーしかない。


手間がかかるので、一人暮らしを始めてから作ってなかったけど、味見をしてみたらちゃんとおいしく作れていた。


ご飯が炊けたことをお知らせする電子音がなり、しゃもじでかき混ぜる。


「ご飯よし、サラダよし、カレーよし」

ひとつひとつ、指差し確認をしながら、そんなに広くない部屋の中をうろうろと歩き回った。


「キリコ、どうしよ。緊張する」


キリコは大好きなサラダ菜の葉っぱをもしゃもしゃと一生懸命食べている。


キリコの前で三角座りをしてしばらくよく動く口元を見ていたら、部屋のチャイムが鳴った。


時計を見ると、ちょうど7時だ。



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