ありふれた恋でいいから

願わくは君の姿を見ていたい

そして、無事に卒業を迎えた日の夜。
俺は友達のコウが自宅で開くサッカー部の打ち上げに誘われて、参加した。

進学を決めた奴に、就職を選んだ奴。
進む道はそれぞれ違っても、3年間サッカーという共通のものに情熱を捧げた俺たちは言ってみれば仲間で。

青春と呼べる高校時代を振り返りながら、目の前に広がる未知の世界に、上がるテンションを止める奴は誰もいなかった。

コウの両親が仕事でいないのをいいことに、いつの間にか誰かが準備したアルコール。

受験から解放された今の俺たちには大人への通過点のようで、そこまで罪悪感にも囚われず勧め合い、勧められるままに呷った。

正直、ビールなんて初めてじゃなかったけれど、自分の許容範囲を知るまでに飲んだ事もなかった俺は、ゆらゆらと回りだす意識の中、何とも言えない高揚感に浸っていた。
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