ひねくれ作家様の偏愛




二人で向かい合うのは慣れていても、二人で並んで座るのは慣れていない。

必然として、俺と千弥さんの打ち合わせはいまだに向かい合うスタイルだ。
それが高じてプライベートで部屋にやってきた時まで、千弥さんはいつも一人掛けソファの方に座る。

この距離感をどうにかしたいと思っているのは、どうやら俺だけの様子。

本日も彼女は“仕事”として打ち合わせにやってきている。


「智くん、このラストやっぱいいよ。私、すごい好きだな」


千弥さんがテーブルに置いた俺の原稿は、連載の最終回分のもの。
『ともし火』での初連載は来月号で無事最終回を迎える。
単行本としても発売される予定だ。


「千弥さんが好きなら、それで満足です。俺、あんたのために書いてますから」


はっきりと言葉にすると千弥さんは、あっという間に真っ赤になる。
ダッサいメガネの奥のこげ茶の瞳が真ん丸くなる。何度好きだって言ってもその度照れる彼女。

俺がどれだけ好きか。
きっとまだわかってないんだろうな。
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