神様のおもちゃ箱

窓に映った間抜け


「じゃあ俺、和風ハンバーグのライスセットで」

「私はイカとタラコのスパゲッティ。あ、あとドリンクバー二つ」


貼り付けられたような笑顔のウエイトレスが「かしこまりました!」と言って、注文を確認しながら読み上げ、メニューを下げた。


俺たちは今、駅前通りのファミレスにいる。

窓際の四人席。


時間が時間なので、かなり混雑していて入り口の所では待っている客もちらほら見受けられ、近くの席では、高校生達がやたらでかい声で笑い声をあげている。


「多分、今、井伏さんは日本にいないんじゃないかなぁ」


由紀子さんがホットコーヒーに口をつけて、おもむろに言った。



「えっじゃあ、海外?」

「多分……あ、でもどうだろう、はっきりとは分かんないけど…。フリーカメラマンは本当にどこへでも行っちゃうからね。怖いもの知らずっていうか」



由紀子さんが写真集をパラパラめくりながら肩をすくめて言う。



「紛争地域だろうか、からっからの砂漠だろうが、サバンナだろうが、どこへでも」



そういえば井伏言ってたっけ。

“俺は旅に出る。しばらく帰らない”


それって写真撮りに行ってたんだ。
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