アナザー・シンデレラ

見え隠れする狂気

一方、シンデレラは夕食の盛り付けをしていました。

生前に母親が残してくれたレシピを見て、一生懸命に料理を作っています。

と、そこに継母がやって来ました。


「一人で家事をこなすなんて偉いわねえ、シンデレラ」


微笑んでいる継母を見て、シンデレラは引きつった笑みを返しました。


「あ、ありがとうございます」


「あら、そこにあるノートはなに?」


継母が指差したのは、レシピが書かれたノートでした。


「あ……生前、母が残してくれたものなんです。私、掃除や洗濯は出来るんですけど、料理が得意じゃなくて……だから、こうやってレシピを見ながら料理を作っているんです」


はにかんだシンデレラを見て、眉間に皺を寄せた継母はすぐに顔を笑顔にしました。


「お母様を本当に愛していたのね」


その言葉を聞いて、顔を緩ませたシンデレラでしたが、継母の呟きを聞きのがしませんでした。


「とっくに死んだ者なのに……可哀想な子」


シンデレラは唇を噛み、俯いてしまいました。


継母はそれだけ言うと後ろを向き、足早に厨房を去って行きました。







……この時、シンデレラをよく見ていたら、未来は変わったのかもしれません。


シンデレラは継母がいなくなったことを確かめると、ポケットから小さな小瓶を取り出しました。中には液体が入っており、小さく波打っています。


シンデレラはその液体を数滴、スープの中に垂らしました。


シンデレラは小さく微笑み、こう呟きました。





「これでやっと、解放される――――――」
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