理論と刀と恋の関係。

もしかして、な人たち

肩をたたかれ、振り返ると……ん?



どこかで見たことがあるような、無造作ヘアに袴姿の男の人がいた。



その人はぐわしっと私の手を握り、目をきらきらさせて語りまくる。



「おまん、さっきの見ちょったぜよ!」



それはそれは、大興奮。



わ、ちょっと鼻息…



…それにしてもこの人、ほんとに誰だっけ?



私が考えている間にも、この人のマシンガントークは続く。



「わしが一番たまげたのはのぅ、おまんのその知識ぜよ!

あの、“ぱすかる”とか“ひいる”というのは、何のことがか?」



…あ、思い出した。坂本龍馬だ。



やば。超有名人じゃない…。



「…おい?おまん、聞いちょるか?」



「ぅえ!?あ、はい。すみませ…」



急いで謝ると、坂本さんはにこにこしながら言った。



「いいぜよ、いいぜよ!

それで、その“ぱすかる”ちゅうのは…」



「…!!そこのあなた、もしかして土佐藩の___!」



ふいに第三者の声が割り込んできた。



坂本さんは一瞬表情を固くする。



人垣の中から1人の男が出てきて、坂本さんの腕を引っ張った。



「っ坂本さん、壬生狼が来ちょる。早うこっちへ!」



坂本さんは私を見て言った。



「今度会った時はゆっくり話がしたいぜよ。

おまん、名は?」



「え…宮瀬 遥花です。」



名前を聞かれ、とりあえず答えていると、坂本龍馬の友人らしき人が苛々した調子で言った。



「坂本さん、死にたいんかよ!早うっ」



そして、2人は人を蹴散らすように走っていった。



私はそれを呆然と見送る。



…何だったんだ、いきなり。



「あなたたちは、あの2人を追いかけてください!」



『はい!!』



続いて、さっき聞こえた第三者さんと、ごつい男の人の返事が3人分聞こえた。



ちょ、ちょっと待って。



さっきから色んな人が喋ってるけど…



状況がころころ変わって頭が追っつかない…!



「あれは撒かれてしまうでしょうね…」



さっきまで遠くから聞こえていたはずの第三者さんの声が、真後ろから聞こえた。



そのことにびっくりして後ろを振り返ると…



「さて、あなたは僕と一緒に来てもらいます」



絶対零度の笑みを浮かべた美青年が、こちらを見つめていた。
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