あなたと恋の始め方①

恋は難しい

 起きたのはいつも通りの6時。目覚まし時計も掛けないのに、スッと目が覚めてしまうのは毎日の習慣。それが私らしいと自分でも思ってしまう。


 仕事のある日はそう。
 どんなに遅く寝てもこの時間に起きてしまうのだった。毎日、決まった時間に起きて、軽い朝食とコーヒーを飲んでから会社に行く。身体に時計が刻まれたかのように感じるほどだった。

 でも、今日の私はいつもと少しだけ違う。後、30分後には小林さんにモーニングコールをする。小林さんを遅刻させないための大事なミッションが控えている。でも、この失敗の許されないミッションは朝から小林さんの声を聴くことが出来るというオプション付き。



 嬉しい反面の緊張。そう思うと、急に胸の奥がザワザワしてしまい落ち着きなくなってしまう。

「とりあえず用意しよ」


 先に会社に行く準備を済ませることにした。動いていた方が気が紛れる。顔を洗って、髪を結んで。化粧をして…。服を着替えて。小林さんを起こす6時半前にはすでに準備は万端。携帯片手に…。


 なぜか正座している私がいた。


 ただ朝から電話して起こすだけなのに何でこんなに落ち着かないのだろう。


 深呼吸してから…。
 携帯を操作して…。小林さんの電話番号が画面に映り。私は通話ボタンを押す。


 ここまで何故か息を止めている私がいた。呼び出し音が鳴るとフッと息が漏れた。胸が苦しい。


 トゥルル…トゥルル。
 ドキドキ…バクバク…。


 呼び出し音が聞こえる。私の心臓の煩い音が身体中に響いていた。

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