イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
■1st STAGE■

ブラック上司、参上



まだまだ残暑が厳しい、八月下旬の昼下がり。

私はひとり、あまり冷房が効いているように感じない、レストランの厨房の裏口を入ったところに立っていた。

業務用食品を主に扱う卸売業の会社で、入社四年目にして営業部に急きょ異動が決まり、配属されてまだ一週間。

普段はオフィスの中で、見積書や、営業が必要なデータを集計して資料を作ったり……という事務仕事をしているものの、今は先輩社員に頼まれ事をされてここにいる。


このイタリアンレストランで使われている食材は、うちの会社に発注してくれている割合が多い。つまりお得意様である。

私も何度か食事をしに来たことがあるけれど、こうやって裏側に入るのは初めてだ。


今日の服装は半袖のブラウスに、淡い水色のフレアスカート。レディーススーツではないけど、きれいめな格好だから失礼ではないだろう。

緩くうねった長い髪の毛は、耳の後ろに流して品の良いシュシュでひとつにまとめている。

その身だしなみをチェックしていると、厨房の中から中年の男性がこちらに向かってきた。白いコックコートを着ているから、調理師なのだとわかる。

その彼が、帽子を取りながら物珍しそうな顔で私をまじまじと見る。

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