僕の星

彼の手がかり

 修学旅行は楽しかった。
 里奈は帰りのバスの中、疲れてうとうとしながらも気持ちは満たされている。

 東大寺や奈良公園を散策した翌日、明日香と斑鳩へ移動した。

 大和三山、亀石や酒船石など謎の遺跡の数々、そして法隆寺夢殿――
 この目で見たいと思っていた名所旧跡を巡り、とても嬉しかった。

 出かける前は、これほど楽しい旅行になるとは思わなかった。もしかしたら、あれのお蔭かもしれない。
 里奈は旅行バッグに仕舞った、小さくてきれいな粒を思った。

 バスの中は寝ている生徒が大半だが、律子を中心とするグループは賑やかだった。
 あの男の子達の写真を見せ合い、シェアしているのだ。

 きゃあきゃあ騒ぐのを、迷惑そうに見ている子もいる。里奈も、昨日までならそうだったかもしれない。
 いや、その写真を見るまでは。

 律子が「はい、進太君と里奈ね」とスマホに送ってきた写真を、はじめはいらないと思った。

 だけど、写っている人を見た瞬間、驚きで眠気も吹っ飛んでしまう。

 大真面目な里奈と、上から目線の進太が並んでいる。
 その後ろに、あの少年がいた――
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