意地悪な片思い

A.M.?P.M.?


 ピピピ――、私の携帯がけたたましいほどになる。

「……朝か。」
 いつもなら5分後のそのまた5分後のそのまたそのまた5分後に仕掛けている6時15分に起きるはずなのに、今日は1回目のアラームで私は目を覚ました。

 上半身だけ布団から体を出すと、横に置いているストーブのスイッチを入れる。

何年か前から使っている随分古いやつだから、そいつは3分ほど待たなきゃ部屋を暖めてくれない。

 私はまた体を布団の中におさめてすぽっと頭までかぶり、かまくらのような体勢で携帯を開いた。

「……ハハハ。連絡来ず。」
 開いた速水至と書かれたトーク。
ぽつんと私が送ったメッセージだけが画面にのっかっている。

むなしいな~。
既読すらついていないのを見るとかえってすがすがしい。

昨日送ってからしばらくはそわそわ私もしていたけれど、日が暮れてすっかり夜になってしまうとそんな躍動もなくなってしまっていた。


その代わりに嫌なものが、朝を迎えた私の心に生まれてしまっている。

「今日、会社行きたくないよー。」
 横臥からうつぶせの体勢に持って行った私は、すりすりと敷布団に頭をすりつけた。

「気まずいよー。」
 顔をあわさないとはいえ一応同じ場所にいるんだ、その一言に今は尽きる。

「……もう1回寝よう。」
 やけになった私は再び夢の中に逃げ込む。

しかしもう時間は来てしまったみたいだ。ボッという音ともにストーブの稼働音が聞こえ始めた。

まったく、卑しいストーブだ。
もう起きろとばかりに責き立て働き始める。

「はいはい、起きますよーだ。」
 
私はガバっと布団を剥いだ。

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