日常に、ほんの少しの恋を添えて
近づく距離と変化する気持ち

反省のシフォンケーキ



 自ら専務に爆弾投下した日の翌日。
 結局昨日は家に戻ってからお風呂入って寝て、それきりだった。頭も痛かったしね……
 しかし……終わった。私終わった。短かったけど秘書の私よさようなら。
 まさか自分が寝言で思っていることを暴露する体質だったとは夢にも思わなんだ。
 ベッドの上でパジャマ姿のまま、私は何度もうーんと呻りながらゴロゴロと転がる。

「せっかく仕事も覚えてきたっていうのに、なんてことを……」

 帰り際、専務何か言ってたみたいだけど、なんだったんだろう。怒っていたんだろうか。
 ……怒るよね……だって何もした覚えないのに嫌悪感持たれてるなんて、私だったらきっと納得いかない。
 ましてや、理由が専務のお菓子嫌いが発端だなんて、露ほども思ってはいまい。
 あー、もう私ってどうしてこう間抜けなんだろう……
 そう思うとどんどんどんどん気持ちはどん底に……
 だめだ。考えちゃダメ。
 そうだ……お菓子……作ろうかな。

 卵と小麦粉と砂糖とサラダ油があればできるお菓子。というとそう、シフォンケーキ。
 材料があるから、という理由の他に今は無心でメレンゲを作りたいが為にこのチョイス。
 卵黄と分けた卵白をハンドミキサーで混ぜている間は、何も考えず無心でいられる。

 たまに専務の顔がちらつくけども。
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