副社長には内緒！〜 Secret Love 〜

どっちが本当のお前？

「副社長、ではこれで失礼します。今日はきちんとご自宅でお休みください」

（しまった！つい余計なことを言っちゃった……）

莉乃は表情には出さないように、必死で顔を作り誠に頭を下げると踵を返した。

「もう帰るから大丈夫だよ。それに明日は土曜日で休日だし」

その言葉に莉乃は振り返ると、誠は頬杖をついていつもの笑顔を莉乃に向けていた。

「失礼します」それだけを言うと、莉乃は特に表情を変えず副社長室を後にした。


誠は今日一日の莉乃を思い出していた。

（今日はいつもと別人だっだよう気がするな。不思議な女）

軽く息を吐いてそんな事を考えていると携帯が着信を知らせた。
画面を見ると、

【着信　清水　弘樹】

「もしもし？」

『誠。仕事終わるか？』

「もうすぐ終わる。どうした？」

『明日、休みだし久しぶりに飲みに行かないか？』

「いいけど昨日、徹夜で仕事だったから早く帰るぞ」

『ＯＫ！じゃあ、いつもの店で！」

「わかった」

（少し飲んでからの方が、よく眠れるか……）

誠は電話を切ると、徹夜明けで少しテンションが上がっているのか、頭は冴え眠気は一切なかった。
少し息を吐くと、デスクの上を片付けると副社長室を後にした。

日中は運転手の車で移動するが、通勤は自分の車で通勤している。

専用エレベーターで地下駐車場へ降りると、愛車のポルシェ911に乗り込みエンジンをかけた。小気味いいエンジン音が駐車場内に響き、誠は早々に発進させた。

一旦家に帰りシャワーを浴び、黒のパンツにＴシャツ、黒の薄手のジャケットを羽織ると家を出た。

誠の家は会社から車で１５分ぐらいの都心のタワーマンションだ。