日常に、ほんの少しの恋を添えて

何でこうも来客が

「なに、どうしたの」
『お前風邪ひいたんだって? 食うもん買ってきてやったぞ』

 インターホンから専務によく似た、男の人の声が聞こえた。

「ああ、ありがとう。今開ける」

 そう言い終えると、専務は通話を終え、マンションの自動ドアを開ける。

「あの……」
「ああ、ごめん。うちの兄貴なんだ。ここに来るけど、兄貴全く害ないから」
「そ、そうなんですね……」

 お兄さんって、将来的に藤久良のトップに立つ人だよね?

 そう思った途端、身が引き締まる。
 失礼のないようにしなければ。いや、それ以前にこんな早朝(ちなみに7時前)に私が専務の家にいるのおかしくない? か、彼女でもないのに。

「専務、やっぱり私がここにいるのまずいような気がします。お兄様に誤解されてしまったら……」

 しかし私がこう言っても、専務に焦りは感じられない。

「大丈夫だろ。俺ら別にやましいことなんかしてないんだから。普通にしてろ、普通に」
「ええ……」

 そんなあ……

 そうこうしているうちにピンポーンというインターホンの音が部屋に響いた。すぐに専務がそちらに向かうと、玄関から専務のお兄さんであろう人の声が聞こえてくる。

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