エリート御曹司が過保護すぎるんです。

【5】好きになってはいけない人

 それから1週間が過ぎた。

 自転車が壊れてしまい、私は電車を使って通勤している。
 けれど、以前より苦痛ではなくなった。

 混雑する時間帯を避けているということもある。
 でもいちばんの理由は、二階堂さんと一緒に乗った満員電車の経験が、嫌な記憶を打ち消してくれたからだと思う。


 自転車という共通項がなくなり、二階堂さんとの接点は減ってしまった。
 けれど変わらず、いや、もしかしたらそれまで以上に、二階堂さんは会社のなかで、気軽に声をかけてくれている。

 サマータイムで、通常よりも30分早く出社する私。
 すると、少し遅れて二階堂さんがオフィスに入ってくる。

 ステンレスのマイボトルにウォーターサーバーの水を汲み、おいしそうに喉を潤したあと、必ず事務デスクにいる私に声をかけていく。

 舞い上がるほど嬉しい。
 彼の声を聞くだけで、今日も頑張ろうという気持ちになれる。

 けれどときおり、彼の態度は私をブルーな気持ちにもさせる。
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