つぎの春には…

〜奇跡〜



春になり病室から見える窓の外には薄い桃色の桜が彩っていた



この地の春は遅い


栞たちがいる地ではもう木々が青々としているだろう




「不死身の親友よ、朗報だ」



光が病室に入ってくる


不死身のやつが病気でこんなに苦しむかよ


「切除できるぞ」


結論だけを言う光


詳しく話を聞くと転移していた癌はほぼ消え、大元の癌も小さくなったから切除が可能になったということらしい


切除した後も抗癌剤治療は続けなければならないが、切除した傷がある程度塞がれば退院できる



「善は急げだからな、お前のために3日後に手術をねじ込んどいたよ」


詳しくは看護師から説明あるからなんて言って去っていく












手術から1ヶ月が経ち退院した俺はその足で空港へ向かう


両親はもう少しゆっくりしていけばなんて言ってたが、臨月の栞から今朝陣痛が始まったとメールが来ていたからゆっくりはしていられない









空港に着くと今度は台風の影響で欠航が相次いでいた


こっちは晴れているからあっちが大荒れなのだろう




仕方なしに空港の椅子に座るとポケットの携帯が鳴っていることに気付く



慌ててポケットから取り出し名前も見ずに通話を押す


「あっもしもし拓ちゃん?」



電話は杏からだった


今朝、栞からの陣痛が始まったというメールを見て杏にメールをしといた


「栞さん、陣痛短くなったから病院に連れてきて今は陣痛室だけど、間隔も2、3分になってきてるからもうすぐ分娩室に入ると思う」


杏がいてよかった


「ありがとう、今空港だけど、台風の影響で飛行機動いてなくっていつになるかわからない」


その時、乗りたい便の搭乗のアナウンスが流れた


「飛行機動くみたいだから行くわ。栞のことよろしく頼む」



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