恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。

めぐり逢ひて



業吉先輩と私が古典研究部に正式入部する日である今日は、門出としては生憎の雨だった。

私の家から高校までは3駅ほど電車に乗るのだが、自転車や徒歩という交通手段が使えないがためにホームには人がごった返している。


『2番線、電車が参ります。白線の内側までお下がりください』


聞きなれた駅のアナウス、時刻は午前7時30分。

入学して1週間ちょっと経ったけれど、通勤、通学ラッシュのこの時間帯に電車に乗るのは、精神がかなりすり減る。

しかも、ホームに到着した段階から満員の電車。そこにまた、新しい乗客が駅員によって押し込まれる。

まるで、すし詰め状態だ。

なんとか乗る事ができ、プシューッと扉が閉まると、今度は人の間に挟まれて身動きができない車内での戦いがある。


この狭い中でぶつかるのは仕方ないというのに、やれ肘が当たっただの、寄りかかるなだの、言い争いが勃発する。

声がなくとも、無言で凄まれることもたまにある。

朝の電車はもはや、戦場である。


……はぁっ、早く着かないかな。

電車の中に立ち込める誰かのキツイ香水の匂いに、肌に張り付くような湿った不快な空気。

それらを吸い込んだら、胸のあたりがムカムカして吐き気がした。

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