覚醒者3号-最終調査報告-
第一章

矢崎

その男は、提出した第二次調査報告に無言で目を通す。

白髪混じりの頭髪。

仕立ての良いダークのスーツ。

スラリとした体型で、とても五十を前にしたとは思えない紳士だ。

…上等なソファに腰掛けたまま、穏やかな表情でその男は顔を上げた。

「機関実行部隊最強の、第七分隊を率いる君が、随分苦戦しているようだね…」

「は…」

目を合わせられないまま、俺は小さく返事する。

くそ…あんな柔和な表情で、何てプレッシャーだ。

これが機関の『ボス』。

俺達機関の末端が普段お目にかかる事のない、雲の上の存在…。

「私は君を咎めているのではないのだよ?矢崎君」

ボスはソファに深く腰掛け、足を組み、両手を膝の上で重ねた。

「むしろ君の心労をねぎらってあげたいくらいだ。あの覚醒者1号をも退けた新たな覚醒者…3号…小山田哲平…更には素体の中からも初の覚醒者が誕生したそうじゃないか」

「はい…まさか廃棄場送りになった素体から、そのような者が出るとは…」

俺は床を見つめたまま、冷や汗を拭いつつ報告する。

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