海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

再生

大和は卒業が近付くにつれて更に忙しくなり、それに比例してバイトも益々休みがちになっていった。


両立する事が本格的に困難になってきた頃、ついにバイトを辞めてしまった。


忙しさの一番の理由は卒業論文の作成だった。



「今日も卒論で何時に帰れるか分からないから、無理に来なくていいからね。」

「そっか。頑張ってね。」


そんな電話での会話が何日も続き、私の心には大和に会えない寂しさが募った。



『もしかしたら帰ってくるかもしれない。』


と、微かな期待を抱いて大和の家で待ち続け、結局、翌朝になっても彼の姿は無いという日も珍しく無かった。


一日中大学にこもっていたからだ。


そんな生活を送っていれば、バイトが出来なくなった事も理解できた。



寂しい気持ちは日に日に膨れ上がったけれど、仕方がないのだとぐっと堪えるしかない。


一緒にいる事が当たり前のようになると、少し会えないだけで不安になるものなんだろうか。


相葉先生には、会えない時間が沢山あっても揺るがない気持ちがあったのに。


不思議だなって思う。



大和が卒論で必死になっている間、私は両親に会社を辞めて大和に着いて行くつもりである事を話した。


「結婚もしないで、ただ着いて行くだけなんて…。」


と、両親は反対したけれど、最終的には渋々許してくれた。


会社にも退職願いを出し、それが了承された事で、本当に大和との新しい生活が始まるのだと実感出来た。



両親の心配を振り切って出て行く事が、私の我が侭だって事はよく分かってる。


けれど、


それでも大和に着いて行きたいって思ったんだ。


この先ずっと一緒にいる人は、大和しかいないと思ったから―…
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