ふたつの指輪
第1章 望まないバイト

1. 初めての客

「それじゃ……ドア閉めます」

店員さんは、仏頂面であたしに目配せすると、ドアを閉めた。




改めて、部屋を見回す。


ブルーシートみたいな水色一色の、安っぽい小さな部屋。

そこらじゅうにバスタオルが敷きつめてある。

それがいっそう安っぽく、ひどく下品だった。


不意に死ぬほどの不安が押し寄せて。

あたしは鏡に映った自分を呆然とみつめた。




胸元まで素直に伸びたまっすぐの茶色い髪と、自信のなさげな大きい目。

ふっくらした頬が手伝って。

あたしは自分でもひどく幼く見えた。



――こんな場所とこんな服装に、まるっきりそぐわない。




(どうしよう……)



こんなとこに来ちゃって。
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