日ノ本時代男子

進路について

放課後の教室。私は、机に突っ伏していた。

机の上には、お菓子のゴミとスマホ。スマホ画面には『好きな画像を並べて進路を決めよう!』という占いサイトのスクショが表示されている。結果は『流しそうめん職人』だった。

​「流しそうめん職人かぁ……。いっそ竹を割る人生も悪くないかもしれない……」

頬杖(ほおづえ)をつきながら、ぐで〜っと体を伸ばす。ついでに人をダメにするクッションに沈んでる人のモノマネをする。

そんなダメ人間オーラをまき散らしていた私の前に現実がやってきた。

「おい、堕落人」

バァン!

勢いよく机を叩いて現れたのは、委員長。

顔が怖い。めっちゃ怖い。なんで?今日そんなに怖い日!?

「えっ、え、委員長。もしかして……もしかして私の堕落生活を見かねて、更生させに……?」

「違ぇわ、アホ!」

即座の否定。

しかも自分のカバンをごそごそと漁り、取り出した一枚の紙を私に突きつけてくる。

「進路希望用紙だ!お前だけだろ、まだ出してないの!」

「うわぁぁぁ!」

まるで悪霊でも見たかのようにのけぞる私。

「し、進路……進路なぁ!?あ〜、懐かしい響き!小さい頃はよく言ってたよね、『将来の夢は?』とか!」

「今がその将来の夢を考える時期なんだよ馬鹿!」

「わ、分かった、じゃあ……竹を流れるそうめんになりたい……!」

「逃避すんな!」

「じゃあ委員長はどうなのさ!」

詰め寄る私に、委員長は一瞬たじろぎつつも、咳払いして言った。

「四葉高校。……って言っても進路の選択肢として考えているだけだが」

四葉高校とは近畿で上位片手に入る程、偏差値がかなり高い高校。

「ここに学力格差の壁がある!」

委員長が私の机から、くしゃくしゃにした旧・進路希望用紙(清書済み)を見つける。

そこには、へったくそな字で大きくこう書かれていた。

『希望進路:異世界』

「本気で現実から逃げるなや!」

委員長の魂のツッコミが教室に響き渡る。

「つーかお前、SNSで『#進路不明中学生』とかタグ付けて投稿してんだろ!」

「あ、あはは……」

委員長は盛大にため息をついたあと、机に突っ伏す私の目の前に、改めて進路希望用紙を突き出す。

「せめて白紙じゃなく、何か書け。頼むから」

「……じゃあ書くよ」

シャッとペンを走らせる私。

『希望進路:楽しく生きたい』

「人生相談かよ!あと就職か進学か選べや!」

結局この後、委員長と私で新しい進路希望用紙を四回書き直すはめになった。

最終的に私が書いた進路希望は、『勇者になって世界を救いたい。それか流しそうめん職人』

「お前……本当に何考えて生きているんだよ……」

委員長の呆れと疲れが混ざった呟きが聞こえた気がするが、気にしない気にしない。
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