日ノ本時代男子

奈良さんと平安さん

初夏の少し蒸し暑い日差しの中、学年全体での課外授業バス旅行が始まった。

行き先は奈良&京都の歴史スポット巡り。

バスの中では、自由席。

窓の外は薄曇りで、いつも見える伊吹山も今日は薄っすらと雲に隠れている。

「俺、バスの中で酔うんだよね〜……」

前列に座っている健太(けんた)は座席に座るなり、既にぐったりとした顔になっている。

「まだ高速入って三十分も経ってないけど」

蒼真(そうま)は呆れつつも、紙袋を健太の手に渡す。
バスの中で、さっそくお菓子の交換合戦が始まった。私の周りでも和気あいあいとチョコやグミを出し合っている。

「飴やる」

隣に座る朱里(あかり)がレモン味の飴玉を差し出してきた。

「ありがとう!じゃあこれあげる」

ゴソゴソとリュックから取り出したのは、近所のスーパーで買ってきた小分けタイプの『ぼんち揚』

「お。ありがと」

✳✳✳

無事、奈良に到着。

バスが奈良公園に到着すると、わらわらと私達は定番の鹿エリアへ直行。

「うおっ、近い近い!」

健太が鹿せんべいを手にした瞬間、五匹の鹿が猛ダッシュ。

「誰だ、あいつに持たせたの!」

蒼真が叫ぶが遅かった。健太は鹿に囲まれ「人間やめたい」とうずくまっていた。

朱里はというと……

「おい、さっきの鹿!ウチのスカートかじっただろ!」

「鹿相手にマジギレしないで!?」

委員長はその横で大仏様に手を合わせていた。

「大仏様……あの人達、どうか無事に学校戻ってこれますように……」

奈良の騒動を乗り越え、次にバスが向かった場所は京都。

班ごとの自由行動で、訪れたのは金閣寺と清水寺。

「金ピカ!ゴージャス!」

「お前、語彙力ゼロか」

委員長がため息をつく。何やかんや言って委員長も楽しんでるよね?

それから、ぶらぶらと京都の街を散策する。

「俺、抹茶アイス買ってきた〜!」

「何してんだ、バカ四天王!買い食い禁止って言われてただろ!」

委員長が叫ぶも、時すでに遅し。

蒼真、朱里、健太、そして私が見事に全員違反して先生に連行されてしまった。

「全員、反省文だな……」

「ダメって言われたらやりたくなるよね。分かる」

「これが味の代償か……」

「でも美味かった……」

先生に連行されていく私達を見ながら、委員長がぽつりと呟いた。

「まぁ、これも思い出……なのか?」
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