迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~

第31話 フィリーネの秘密(シドリウス視点)



 ***

 バルコニーから大広間に戻ったシドリウスは、人の間を縫うようにして飲み物を取りに行っていた。
 大広間の中央では先ほどシドリウスが踊っていたように、うら若い男女が優雅なダンスを披露している。その様子をちらりと目にしたシドリウスは頬を緩ませた。

 今夜の舞踏会はこれまで参加してきたものの中で一番楽しかった。
 何故なら、自分も大切な相手と一緒に踊れたからである。
(番がいるだけで、煩わしかった舞踏会がこれほど素晴らしく感じるものなんだな)
 シドリウスはえも言われぬ高揚感に包まれる。あれほど退屈でモノクロに見えていた世界が今では色鮮やかな世界へと変化していた。
 嬉しいことはもう一つある。


 それは、自分に自信がなかったフィリーネがダンスを通じて堂々とした振る舞いを見せてくれるようになったことだ。
 本人は気づいていないようだが、フィリーネは自己評価が低かった。
 これは育ってきた環境が原因だろう。明るく前向きな性格をしているのに、自分に対しては後ろ向きかつ否定的だった。
 しかし、町の祭りで踊ってからは自己表現の楽しさに気づいたらしい。

 上手く踊れたことで自信がつき、今夜の舞踏会でも堂々と踊れるようになっていた。
 礼儀作法もしっかり身についているので、周りとも上手く馴染めている。
 この短期間でフィリーネは、どこに出しても恥ずかしくない令嬢に成長した。

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