因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~
第22話 聖女は魔王の呪いを解く
デヴィール国は夜の訪れが早い。全てが黒色に塗られた国なだけに、そう感じるだけかもしれない。
そんな漆黒の国の王であるアゼルは1日の仕事を終えて自室に入ると、風呂上がりの艶やかな黒髪をかき上げて息を吐く。
(はやくエリーゼを取り返さねば……夜も眠れん)
まずはウィリアム国にエリーゼとセレンの人質交換を要望する旨の書簡を出す準備を進めている。レミアルはメイドとして、この城に住み込みで働く事になった。
もう、何日エリーゼを抱いてないのだろうか。今日も冷たいベッドで一人で眠る事を考えるだけで気が滅入る。
「……ん?」
アゼルは寝室のドアを開けた途端に声が詰まった。正面に見えるベッドの上に誰かいる。
ベッドの上に正座をして座り、長い金髪をシーツの上に垂らして深く頭を下げた女性。両手を揃えてお辞儀をした形で留まっている。
まさに求めていた愛しい人の姿を目にしたアゼルは、彼女の名を叫んでいた。
「エリーゼ!!」
ついにエリーゼの幻覚まで見えてしまったのかとは疑わずに、駆け寄ってベッドの上に片足を掛ける。その時、ふいに女性が顔を上げた。
彼女の顔は期待通りの青い瞳ではあったが、エリーゼではない。アゼルと至近距離で顔を合わせたのはセレンであった。瞬時にアゼルの勢いは止まる。
「貴様……オレのベッドで何をしている?」
問い詰めるようなドスのきいたアゼルの声にもセレンは怯まない。それどころか頬を赤く染めて微笑んでいる。
セレンは白い薄手のネグリジェを着ていて下着同然。服の上から見ただけでもエリーゼ以上のスタイルの良さだと分かる。
「夜伽よ」
「……は?」
一瞬、アゼルはその単語が理解できなかった。愛するエリーゼでもない、憎きセレンの口から飛び出す言葉としては予想外すぎた。しかし少しも心は動かない。
それでもセレンは色仕掛けのように上目遣いで青い瞳を潤ませている。その瞳すらエリーゼとそっくりで目を見張る。アゼルにとっては確実にやっかいな相手だ。
「私は人質だから、アゼル様にご奉仕するのは当然でしょう?」
「なんだそれは。オレはエリーゼの夜伽には興味があるが、貴様に興味は全くない」
アゼルの返しも下衆ではあるが、それで引き下がるセレンではない。セレンは自分に絶対の自信を持っている。
「私は最強の聖女だし、お姉様と容姿も似てる。ううん、私の方が勝ってる。それなのに、お姉様を選ぶ理由は何なの?」
「知らん。愛に理由なんぞあるか」
それらしい回答をするアゼルだが、本当はアゼル自身にも理由は分からない。それはアゼルの溺愛の半分は『呪い』によるものだという自覚がないからだ。
「それなら私の夜伽にも理由はいらないわよね」
屁理屈を言いながらもセレンはアゼルの逞しい胸元に頬を寄せる。その耳がアゼルの心臓部に近付いた時にセレンは妙な感覚を覚える。
(なに……? アゼル様の魂を囲い込むような、この邪悪な気配は……)
それはアゼルの中に流れる、聖力とは全く逆の『呪い』の力であった。
そんな漆黒の国の王であるアゼルは1日の仕事を終えて自室に入ると、風呂上がりの艶やかな黒髪をかき上げて息を吐く。
(はやくエリーゼを取り返さねば……夜も眠れん)
まずはウィリアム国にエリーゼとセレンの人質交換を要望する旨の書簡を出す準備を進めている。レミアルはメイドとして、この城に住み込みで働く事になった。
もう、何日エリーゼを抱いてないのだろうか。今日も冷たいベッドで一人で眠る事を考えるだけで気が滅入る。
「……ん?」
アゼルは寝室のドアを開けた途端に声が詰まった。正面に見えるベッドの上に誰かいる。
ベッドの上に正座をして座り、長い金髪をシーツの上に垂らして深く頭を下げた女性。両手を揃えてお辞儀をした形で留まっている。
まさに求めていた愛しい人の姿を目にしたアゼルは、彼女の名を叫んでいた。
「エリーゼ!!」
ついにエリーゼの幻覚まで見えてしまったのかとは疑わずに、駆け寄ってベッドの上に片足を掛ける。その時、ふいに女性が顔を上げた。
彼女の顔は期待通りの青い瞳ではあったが、エリーゼではない。アゼルと至近距離で顔を合わせたのはセレンであった。瞬時にアゼルの勢いは止まる。
「貴様……オレのベッドで何をしている?」
問い詰めるようなドスのきいたアゼルの声にもセレンは怯まない。それどころか頬を赤く染めて微笑んでいる。
セレンは白い薄手のネグリジェを着ていて下着同然。服の上から見ただけでもエリーゼ以上のスタイルの良さだと分かる。
「夜伽よ」
「……は?」
一瞬、アゼルはその単語が理解できなかった。愛するエリーゼでもない、憎きセレンの口から飛び出す言葉としては予想外すぎた。しかし少しも心は動かない。
それでもセレンは色仕掛けのように上目遣いで青い瞳を潤ませている。その瞳すらエリーゼとそっくりで目を見張る。アゼルにとっては確実にやっかいな相手だ。
「私は人質だから、アゼル様にご奉仕するのは当然でしょう?」
「なんだそれは。オレはエリーゼの夜伽には興味があるが、貴様に興味は全くない」
アゼルの返しも下衆ではあるが、それで引き下がるセレンではない。セレンは自分に絶対の自信を持っている。
「私は最強の聖女だし、お姉様と容姿も似てる。ううん、私の方が勝ってる。それなのに、お姉様を選ぶ理由は何なの?」
「知らん。愛に理由なんぞあるか」
それらしい回答をするアゼルだが、本当はアゼル自身にも理由は分からない。それはアゼルの溺愛の半分は『呪い』によるものだという自覚がないからだ。
「それなら私の夜伽にも理由はいらないわよね」
屁理屈を言いながらもセレンはアゼルの逞しい胸元に頬を寄せる。その耳がアゼルの心臓部に近付いた時にセレンは妙な感覚を覚える。
(なに……? アゼル様の魂を囲い込むような、この邪悪な気配は……)
それはアゼルの中に流れる、聖力とは全く逆の『呪い』の力であった。