『もう、好きじゃないことにした』

Ⅲ、莉央がいない

朝。

蓮が目を覚ましたのは、いつもより少し早い時間だった。

まだ眠い目をこすりながら、隣に手を伸ばす。

「……莉央?」

いつもなら、そこにいる。

けれど。

触れたシーツは、冷たかった。

「……あれ?」

蓮はゆっくり目を開けた。

隣に莉央がいない。

「莉央?」

寝室を見渡す。

いない。

「……トイレかな」

そう思って待つ。

一分。

二分。

三分。

戻ってこない。

蓮はベッドから起き上がった。

「莉央?」

リビング。

いない。

キッチン。

いない。

洗面所。

いない。

「……莉央?」

玄関を見る。

靴がない。

その瞬間。

胸が嫌な音を立てた。

「……え」

昨日まで、普通だった。

笑っていた。

「大好き」と言ってくれた。

何も変なことはなかった。

なのに。

靴がない。

スマホを手に取る。
< 100 / 128 >

この作品をシェア

pagetop