恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
その後の二人

 今日は、これまでのどんな日よりも緊張する日かもしれない。
というのも、ついに帆高の実家、あの東和商事を率いる久東の本家へと招かれているからだ。

 当然、婚姻届を出す前後に顔合わせ自体は済ませていた。しかし、帆高が強く希望したため、先に籍を入れる形をとっていた。そのため、こうしてあらためて屋敷へお邪魔し、ゆっくりと挨拶をする機会がなかった。
 着ていく洋服一つを選ぶだけでも、久東家の門を潜るとなると指先が強張るほど緊張してしまう。

 吟味に吟味を重ねた末、今日はシンプルな黒のタックパンツに、首元に控えめなフリルがあしらわれた清潔感のある白いブラウスを合わせ、アクセサリーも小さなパールのピアスにとどめた。
失礼にならず、かといって華美になりすぎない、当たり障りのない上品な装いを意識したつもりだった。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」 隣で車のハンドルを握る帆高が、和香の強張った横顔を盗み見て優しく微笑む。

「……しちゃうでしょ、普通は…。だって、あの久東家だよ?」
「そりゃそうか。でも大丈夫です。正樹さんも根はすごく良い人ですから」
「そ、そうだよね……」

 これまで二度ほどお会いしたことのある帆高の養父であり、実の叔父でもある正樹さんの姿を思い浮かべる。 怜悧で知的な顔立ちに、すらりと引き締まった長身。
 年齢を伺った時、思わず自分の耳を疑ってしまうほど若々しい雰囲気を纏っていた。

(これが“遺伝子”ってやつなのかな……)

 ふと隣で運転する帆高の横顔と重ね合わせ、血の繋がりと久東家という環境が育んだ美貌の凄みに、和香は密かに感嘆のため息をもらしていた。

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