課長に恋してます!

26 本当の気持ち【上村課長】

 香港支社には金曜日の午後に戻って来た。

 一瀬君と結婚するという石上君の言葉が頭から離れない。

 本当に結婚するんだろうか?

 酷い風邪で入院してるかもしれない。
 
 気になって、気になって、気になって……仕方がなかった。

 石上君と結婚する一瀬君とこれ以上、関わりは持たない方がいい。そう思って一瀬君に連絡はしなかった。

 しかし、上海から香港に向かう飛行機の中で考えてしまった。
 一瀬君がもしも、重篤な状態だったらと。

 先週、葵がそんな状態だったから、余計に悪い想像が浮かんでしまう。
 病室のベッドで意識不明になってる一瀬君の姿が浮かんでしょうがなかった。

 金曜日の午後、香港支社に戻り、本社に電話した。
 電話口に出たのは間宮君だった。

「一瀬君が入院というのは本当かね?」

 思い切って聞くと、少し沈黙があった。
 その沈黙に不安になる。

「はあ? 何ですか、それ?」

 間宮君が素っ頓狂な声をあげた。

「石上君から聞いたんだが」

 間宮君が急に笑い出した。

「一瀬先輩、めちゃくちゃ元気に働いてますよ」
「一瀬君、出社してるのかね?」
「代わりましょうか?」
「いや、いい」
「課長、石上主任にかつがれましたね」

 間宮君が笑った。

「そうみたいだね」
「課長がハッキリしないからですよ」
「何の事だね」
「好きなら好きって態度と言葉にしなきゃダメって事ですよ」
「間宮君は面白い事言うね」
「そうやってはぐらかすんですか?そろそろご自分の気持ちに正直になってはどうですか?一瀬先輩、持ってかれちゃいますよ」
「ご忠告ありがとう。しかし、僕には関係ない事だよ」

 電話を切った。

 とりあえず、一瀬君が元気で良かった。
 そう思うのに、悶々とした想いが残った。
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