課長に恋してます!
 石上が上海出張から帰って来た月曜日。

 会社に行くといつも通りの石上が隣の席に座っていた。
 グレーのスーツ姿の石上は忙しそうにパソコンに向かっている。

 顔を合わせたのがプロボーズされた日以来だったから、なんか照れくさい。
 給湯室でコップを洗っている時に、間宮に石上主任と何かありました? なんて聞かれて、手の中のコップがつるっとシンクに落ちてしまった。

「一瀬先輩、動揺しすぎ」
 間宮にからかわれて、居心地が悪くなった。

 昼休みになると、「付き合え」と石上に言われて外にご飯を食べに行った。
 どんな店に連れて行かれるのかと構えていたら、私がよく行く定食屋さんだったのでほっとした。
 石上はかつ丼を頼み、私は焼き魚定食を頼んだ。

「上海で上村課長と一緒になったぞ」

 出された水を飲むと、石上が言った。

「ふーん、そうなんだ」

 気になって仕方なかったけど、あえて聞かなかった。

「課長にもっと食いつくかと思ったが、素っ気ないな」
「いつまでも課長、課長って追いかけている程往生際が悪くないの。もう課長の事は諦めたんだから」

 やせ我慢だった。
 まだまだ課長の事が好きで、気を抜くと泣きそう。

「そうか。それは良かった。実は課長に一瀬と結婚するって宣言しといた」
「えっ!」

 びっくりしてテーブルに手をついて立ち上がった。

「一瀬、座れよ」

 石上が笑う。

「私、石上と結婚するなんて一言も言ってないよ」

 ドンッとテーブルを叩いて抗議する。

「俺はお前と結婚するつもりだ」

 サラッと言った石上の言葉にため息がこぼれる。
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