熱の城
♜ 灯された炎
「狭いですが、どうぞ? 御手洗いは、入ってすぐ左のドアです」
「……ありが、とう」
わたしがニコニコと笑顔で案内したから、タイガーは、バツが悪い顔でお礼を言って、家の御手洗いに入った。
良かった、忙しくてヘロヘロだったけど、一昨日掃除しておいて。ヘンな所、ないよね? 会社の人を家に入れるなんて初めてだから、ヘンに緊張してしまう。
わたしは、一応社交辞令で聞くためのコーヒーを入れるため、お湯の用意をしていた。
「ありがとう藤乃、助かったよ」
出てきたタイガーは、恥ずかしそうに言って、わたしの後ろに立った。学生から住んでいる狭いアパートのキッチンだから、ほんの数歩の世界だけど……。
「どういたしまして、眠気覚ましにコーヒーはいかがですか?」
そう言って、振り返ろうとした、その時…―――
……えっ?
わたしの身体は、タイガーの腕の中に抱きしめられていた。