日ノ本時代男子

安土桃山くん

夏休みの宿題のプリントがテーブルいっぱいに広がっている。

冷たいほうじ茶を片手に、夏休みの宿題を睨みつける。

どれだけ睨みつけても数学のワークは怯まない。いよいよ避けられなくなった宿題達が、抜き差しならない敵となって私の前に立ちはだかったのだ。

勝負は劣勢。

「うぅ……数学分かんない……」

「どったの?」

平成くんが興味津々そうに宿題一覧表を覗き込んだ。

「そんな時こそ、オレ達の力を借りるべきだよ!」

平成くんの案に確かに……と思っていたら、室町くんが飴玉を舐めながらふらりと登場。

「お土産、よろしくね」

「自分は行かない前提なんだな……」

平成くんが呆れたように言う。

「え、当たり前じゃん。また国一揆に巻き込まれるなんて嫌だね」

「室町って、一揆ばっかだよな〜。もっと派手なことしてないの?」

と、平成くんがからかい気味に言う。

すると突然、ギギギギギ!と音を立てて、室町くんが平成くんのこめかみを両手で強く押さえつけた。

「ねぇ、そんなこと冗談でも言ったらいけないよ?何でそんなことも分からないの?そんなことが分からない程、平成はバカじゃないよね?それとも応仁の乱に足軽(あしがる)として参加したいの?」

「オレ、総大将が良い……」

「足軽だよね?」

目が笑っていない笑顔で、精神攻撃を放つ室町くんの姿に、私は凍り付いてしまった。(応仁の乱は室町時代最大の内乱だったんだって)

平成くんは初めこそ、痛い!とか言っていたけど、今は涙目になりながら謝っている。

「ご、ごめん……なさい……」

「む、室町くん!?一旦落ち着こ?平成くん、泣いてるし……」

「……美空も平成が無神経な発言をする時はちゃんと言っても良いんだよ」

彼の顔はゆっくりと振り向き、こっちを向く。

「ハイ」

震えながら頷くと、パッと手を離された平成くんが私に抱き着いてくる。

「うわー!怖かったぁぁぁ!」

「室町くんって……強いね」

「あんな長い槍をぶん回す奴が非力な訳ないじゃん!」

平成くんが涙目で訴えるが、それに冷静に答える室町くん。

「一間(いっけん)半だよ」

室町くんは少しため息をつきながら答えた。

彼の言う『一間半』とは、私の目分量だと約二メートル七十センチくらいの長さだ。

「何をしているでありますか?」

希望の光!とでも言うように、安土桃山くんが階段を降りてきた。

「んー……平成に制裁?」

室町くんが気だるげに答える。

「制裁でありますか!?」

安土桃山くんは驚きの声を上げた。
< 16 / 33 >

この作品をシェア

pagetop