日ノ本時代男子
第八章、若人
三つ編みで制服姿の女子高生が江戸くんに連れられて悠久邸のエントランスに入ってくる。

談話室に向かうと、めちゃくちゃ警戒している女の子とばったり出くわした。

「良かったです、仲間がいましたぁ!」

その女の子は半泣きのまま私の方に駆け寄ってきて、握手する。手を大袈裟に振る。

「え、えっと……?」

勢いがすごくて私は思わず後ずさる。

「えっと……初めまして」

「良かったです……本当に良かったです!」

彼女の目がキラキラと輝く。

女の子が息を整え、談話室に入るとみんながソファに座って待っていた。

「初めまして新人くん。ようこそ、悠久邸へ!」

立ち上がった奈良さんが女の子に一歩近づく。

「………?」

女の子は訳が分からないといった表情で、部屋全体をぐるりと見渡す。

「えっと、ここの説明は時代が近い私が話しますね」

私は振り返り、女の子と目を合わせた。

「えっと……ここにいる人達は全員、元号の化身なんだ。私は令和!令和ちゃんでも令和でも何でも良いよ!」

女の子は目を大きく見開き、きょろきょろと見渡す。

「えっと……ここにいる人達全員?」

女の子の声は小さく、少し震えていた。

大丈夫かな?怖がってないかな?とか考えていると、彼女はバッと顔を上げた。

「夢!?すごっ!あ、あの、ワタシ歴史好きで……いつもお世話になってます!」

そして勢いよくお辞儀した。

「ずいぶんと大胆不敵な人が来たね」

「元気で良い子そうですわ」

「あの……もしかしてワタシ死ぬんですか?コンクールに向かってる最中に事故に遭って、憧れの人に会う幸せな夢を見ているんですか……?」

「わー、ちゃうちゃう!!」

顔色を一気に悪くさせる彼女に、手を振って否定する。

「様々な可能性に考えを巡らすのは良い素質だと思うが……」

「面白い後輩ちゃんでありますね!」

「最期に褒めていただいたぁ……」

涙を流しながら絶望している女の子。

何とか話題をずらそうと頭を捻った。

「えーっと……コンクールって何のコンクールなの?」
女の子は一瞬、泣きながらもキョトンとした表情になった。

「えっと、美術コンクールです。ワタシ、美術部なので……」

「すごい!」

その言葉で女の子の目が一気に輝く。

「あ、そうだ名前!えっと、紗綾(さや)です!よろしくお願いします」

「私も初めての後輩で嬉しい!よろしくね、紗綾ちゃん」

「はい!新人友達ですね!同い年くらいですし、仲良くしましょう!」

「ということで、私も今日から同じ先生として尽力を尽くしますね!」

バッとソファの方を向くと、

「一緒に頑張ろうね」

「令和ちゃんは働きもんたい」

「ほな、俺らももうひと頑張りしましょか」

「新しいお役目を全うするのですよー!」

「改めて令和さん、大義でしたねぇ」

「君は君だと諦めているが、教え導く立場ならそれなりにしたまえ」

「よろしくね!」

「よろしく」

「鎌倉くんを諦めさすなんてなかなかだね。氷菓子いる?」

「あの活気があったからこそ、困難を乗り越えたのかもしれないですね」

「令和ちゃん!お疲れ様であります!」

「お陰様で僕の仕事が増えたよ……」

「まだ学生のような急成長ですが……頼みますね」

「令和っち、お役目お疲れ様〜!」

「今度は御寮人が教える立場だなぁ!」

「後で紗綾ちゃんも入れて動画撮ろうよ!」

口々にお疲れ様メッセージを言ってくれた。

そして奈良さんは私の肩を軽く叩くと、ニコッと笑顔で言う。

「今度はお前が後輩に託す番だ。若人卒業だな、改めて儕輩(さいはい)としてよろしく頼むよ。令和っ!」

「……はい!期待に応えられるように頑張りまーす!」

奈良さんと紗綾ちゃんに元気よく頭を下げた。
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