【第一部完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜

第3話:取引をしましょう


「そ、それは、だめっ!」

 セレスティアは首を横に振り、数歩後ずさった。
 だがすぐさま背中が木の幹に当たり、逃げ場がなくなってしまう。

(えっと、えっと、この場合どうすれば……)

 真っ白になりかけたセレスティアの頭の中に、ここに来る前にマリアベルと作戦会議をした時の記憶がよみがえる。


『そういえば、《緑の民》は妖精を傷つけないと誓う代わりに、妖精王の加護を授かったと聞いたことがありますわ。アナタからはかすかに王の気配がしますし、魂が守られている可能性がありますわね』

「そうなの? じぶんじゃ、ぜんぜん、わからないけど。あなたたちも、おうさまのけはい、する?」

 その場にいたシルフたちにそう問いかけると、彼女らも迷いなく頷いた。

 前世を思い返してみれば、妖精たちの多くは《緑の民》に友好的だった気がする。
 そして今世でも、マリアベルやシルフ、ブラウニー、ボギー、出会った妖精たちはみなセレスティアにとても親切だ。
 それはもしかしたら、セレスティアが妖精王の加護を受けている存在だと、どことなく察しているからかもしれない。

『ケルピーもきっと気付くはずですわ。アナタの魂が、偉大なる妖精王の庇護下にあるのだと』

「じゃあ、あんぜんって、こと?」

『絶対に安全とは言い切れませんけど、人間だって国王の所有物に手を出そうとはしませんでしょう?』

「うん。こわくて、できないよ」

『アタクシたち妖精も同じですわ。《緑の民》の魂を持つアナタを傷つけたと王に知られれば、お叱りや沙汰を受けるのは確実。そんな危険を冒そうとするのは、話の通じない愚か者か、もしくは変態しかいませんわ』

 だから焦らず冷静に説得を試みなさいと、マリアベルから助言を受けた。


(大丈夫、大丈夫……焦っちゃダメ……慎重に)

 セレスティアはひとつ深呼吸をすると、ルドウィジアの瞳をまっすぐに見据え、自身の左胸に手を当てた。

「わたしのたましいは、ようせいおうさまのものです。きずつけたら、あなたがおうさまに、しかられますよ」

『そうだね。確かに君の言う通りだ。王はさぞお怒りになるだろうねぇ』

 よかった、諦めてくれそうだと、ホッとしたのも束の間。

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