【第一部完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
『だからこそ、より背徳感が増すんじゃないか!』

「え?」

 予想外の返しに呆気に取られて立ち尽くす。
 そんなセレスティアの目の前で、ルドウィジアが恍惚とした表情で鼻息荒く(まく)し立てる。

『妖精の長寿というのも困りものでね。長いこと生きていると、大抵のことでは驚かなくなるし新鮮味も感じなくなるんだ』

 だけど!と、ルドウィジアが語気を強めた。

『自分より遙かに高位の御方の大切なものを横取りする……。あぁ……あぁっ……なんという甘美な罪なのだろうかッ……! これぞまさに、僕が追い求めていた最高の刺激(スリル)だよ!!』

(えぇ……ウソでしょ……)

 セレスティアの脳内に繰り返し流れる、マリアベルの言葉。

 ──【《緑の民》の魂を持つアナタを傷つけたと王に知られれば、お叱りや沙汰を受けるのは確実。そんな危険を冒そうとするのは、話の通じない愚か者か、もしくは変態しかいませんわ】

 会話はできるので、ルドウィジアは『話の通じない愚か者』ではない。
 ということは──。

(変態さんだったー!!)

 セレスティアは内心悲鳴を上げ、頭を抱えた。

 誤算も誤算、大誤算だ。
 こうなれば、最終手段。大人しくさせて、お願いを聞いてもらうしかない。

 通常ケルピーは馬の姿に変化し、人間を背に乗せたまま勢いよく水中に飛び込んで(おぼ)れさせる。しかし、その前に馬の首に手綱をかけることができれば、逆にケルピーを意のままに操れるらしいのだ。

 この方法は、前世の祖母が万が一に備えて授けてくれた秘策。
 三歳の身体で暴れ馬を制御できるか不安だが、やるしかない。

 意を決して手綱を取り出そうと鞄を探したが、その手はスカッと宙をかすめるだけで、なにも掴めない。
 それもそのはず。

(そういえば……鞄、マリアベルに渡したままだったぁ~!! あぁ、わたしのバカバカバカァ!)

 妖精王の加護を盾に説得する方法、失敗。
 手綱を使った最終手段、不発。

 このままでは、セレスティアの行き着き先は、暗くて冷たい水の中。
 そう、つまり。


 ────溺死。


 その二文字が頭の中を駆け巡った瞬間、意に反して全身がガタガタと震え出す。
 冷静にならなければと理性が訴えかけてくる反面、幼い思考は恐怖に塗りつぶされ、怖い、死にたくない……そんな思いばかりが脳内を占めていく。

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