【第一部完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
第10話:未来へ続くエピローグ
クリスティーヌが談話室の扉を開けると、先程まで元気にお喋りしていたセレスティアがアルフレッドの膝の上ですやすやと眠っていた。
その愛らしい寝顔に、思わず笑みがこぼれる。
「ふふっ。セレスティアさん、寝てしまったのですね」
「あぁ。はしゃぎ疲れたようだ」
クリスティーヌが手渡したブランケットを、アルフレッドがセレスティアの肩にそっと掛け、優しく頭を撫でる。娘を見下ろす彼の眼差しは、陽だまりのように温かだった。
「ここ最近は死骸虫の件で特に忙しく、この前の誕生の祝祭もろくに祝ってやれなかった。埋め合わせに、この子の喜ぶことをしてやりたいのだが、なにがいいだろうか?」
「そうですね……。あっ、旅行はいかがでしょう?」
「旅行?」
「はい! セレスティアさんが以前、人がたくさんいる街に行ってみたいと言っていたのです。ふたりで家族旅行できると知ったら、喜ぶと思いますよ」
「ふたり? 君は行かないのか?」
「えっ? ……私も同行して、よろしいのですか?」
「もちろんだろう、君も家族なのだから」
当たり前のように告げられた、そのひと言。
アルフレッドはきっと、なんの気なしに言ったに違いない。
けれども、実家にも居場所のなかったクリスティーヌにとって、その言葉はとても、とても嬉しいものだった。
「ありがとうございます……」
クリスティーヌはこみ上げてくる喜びを胸に、ちょっぴり涙ぐみそうになりながら微笑んだ。
するとアルフレッドもわずかに目元をやわらげ、静かに頷く。
「旅行か……。では近々王都へ行こう。スチュアート殿下から、今回の死骸虫の問題を解決した労をねぎらいたいと、晩餐会に招待されたんだ」
「素敵ですね。私も久しぶりにヒルデガルト様にお会いしたいですし、一緒に行きたいです」
「それでは決まりだな。スチュアート殿のところには、六歳になるアドニス様もいらっしゃる。我が家は王家とも繋がりの深い家だ。アドニス様は少々気難しいところがあるが、セレスティアなら友好を築けるだろう」
アルフレッドがそう告げたところで、膝の上にいたセレスティアが「んんぅ……」と呟き、薄目を開けた。目元を擦りながら、ゆっくりと上体を起こす。
「すまない、起こしてしまったな」
「んんう、だいじょぶ……。なんかね、おとうしゃまと、くりすちーぬさまと、あそびにいってるユメみてた……」
「ふふっ。その夢、正夢になりそうですよ、セレスティアさん」
「へ?」
首を傾げていたセレスティアは、クリスティーヌから王都旅行の予定を伝えられると、大きな目をきらきらと輝かせた。
「ホント? ホント? おっきなマチ、いける?」
「はい、行けます!」
「やったーっ! りょこうっ、りょこうっ!」
左右に揺れながら上機嫌に鼻歌をうたいはじめたセレスティアを見て、クリスティーヌはアルフレッドと顔を見合わせ、ふふっと微笑んだ。