こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜

6.お嬢様来社

 道路から建物までは、2メートル程度の歩道のみ。
 日傘なんている?
 というくらいの距離だが、お嬢様には必要なのだろう。
 日傘を持たされている運転手さん、おつかれさまです!

「古くさ」
 文句があるなら来なくていいのよ。
 そもそも招待なんてしていないし。
 
「なんだあいつ」
「私に水をぶっかけたお嬢様」
「は?」
「佐久間、お願いがあるんだけど」
 遥が佐久間に頼みごとをすると、すぐに佐久間は建物に戻る。
 遥は建物の扉の前で仁王立ちしながら、亀のように歩くのが遅いお嬢様を待ってあげた。

「弊社に何か御用ですか?」
「用があるから来たに決まってるでしょ」
「どんなご用件でしょうか?」
「早く中に入れなさいよ!」
 暑いわとお嬢様が呟くと、運転手は急いで扇子を取り出しパタパタと扇ぎ始めた。
 
 あ~、大変だな。
 遥は運転手に思わず同情してしまった。
 
「部外者は社内に立ち入り禁止ですので」
 ご遠慮くださいと遥はにっこり微笑む。

「はぁ? 私がわざわざ来てあげたのに何なの?」
「本日お会いする約束はしておりません」
 お引き取りくださいと遥が伝えると、お嬢様は右手を勢いよく振りかざした。

 あぁ、すぐ手が出ちゃう子なのね。
 今日はパーティでもないし、あなたのお爺さんのことを気遣う必要もないし、その手で叩かれる必要はまったくないのよね。
 
 遥はお嬢様の手が向かってきた瞬間、その場にしゃがみこむ。
 勢い余って倒れそうになったお嬢様は運転手に支えられ、なんとか地面との激突は避けられた。

「な、な、なんなの!」
「ドッジボールは得意だったの」
 立ち上がった遥は、どう? とお嬢様に自慢する。
 怒りで震えたお嬢様は、遥を睨みながら唇を噛んだ。

「あんたのせいでお小遣いを減らされたのよ!」
「……それで?」
「ドレスも作ったし、花火大会を海から見るためにディナークルーズも予約したのに、あんたのせいで払えないのよ!」
「はぁ、それで?」
 なにしに来たのよ、この子。
 花火大会をクルーズ船から見るなんてさすがお嬢様。
 庶民はぎゅうぎゅうの道を通って、海岸沿いを陣取って、ビールを飲みながら花火を見るのに。

「隼人さんが楽しみにしているのに! あんたのせいよ! 早くパパに謝って!」
「ちょっと待って。全然話が分からない」
 遥は溜息をつきながら、お嬢様を手で止めた。

 お小遣いが減ってドレスが買えない、ディナークルーズに行けないのはわかった。
 私のせいかどうかは一旦置いておいて。

 隼人と行く予定だったが、行けなくなったというのもわかった。
 俺は浮気しないと言っていたくせにお嬢様と一緒に行くことになっているのはムカつくが、それも一旦置いておこう。
 あの男が払わず、割り勘なのも変だと思うが、それは私には関係ない。
 
「なんで、あなたのお父さんに謝るの?」
 早く帰ったから?
 いや、でも帰れって言ったのはそっちだし。
 そもそもお爺さんとは話したが、この子のお父さんなんて知らない。

「パパの取り引き先が減ったのよ!」
「それと私と何の関係があるのよ?」
 全然意味がわからない。
 話にならないわと遥は肩をすくめた。

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